不安を撃退する、小さな習慣

※この記事はシリーズ第3話です。
入院のきっかけやICUでの出来事は前編に、退院後の苦悩と「体重を増やす」と決断した経緯は後編に綴っています。

【前編はこちら】「クローン病の合併症でICUへ:それでも“幸せを向けるか”を問い続けた日々(前編)」
【後編はこちら】「〜自分で選んだ“回復への第一歩”〜」


今回の入院は、これまでのどの入院よりもしんどいものでした。これまでは、体調が悪化しても病院に入ると「安心」があったのです。

でも今回は違いました。
入院後すぐに容態が急変し、意識は朦朧。ICUに入り、ほとんど記憶もなく、自分の状態を把握することもできませんでした。

退院してからも、気力は戻らず、体重は減る一方。
連休明けにはレッスン、講演会も控えているのに、心も体もまったく動かない。そんなとき、頭の中は「未来の体調への不安」でいっぱいになっていました。

「また悪化したらどうしよう」
「このまま仕事ができなくなったら……」

考えれば考えるほど、不安にとらわれていきました。

そんな中、一本の電話が鳴りました。
友人からのものでした。

その友人は、私の状態を聞いて、こんなふうに言いました。

「そういう思考が、現実を引き寄せちゃうんだよ。」

「自分の中にある“本当の自分の思考”と、外から入ってきた“外的要因”が混ざり合って、自分の考えが見えなくなっているんじゃない?」と。

そして、こうアドバイスをくれました。

「『こうなったらイヤだな』って思考が出てきたら、それは“お客さん”がまた来たと思って、そっと切り離せばいい。
うまくできなくても、そうやって“今、外から影響を受けてるな”と気づくだけで十分だよ。」

なるほど、と思いました。

そして友人は最後にこう言いました。

「今、この瞬間に感じることを大切にしてみて。」

この言葉が胸に残り、その日は意識的に“今”を感じてみようと決めました。


すると、驚くほど小さなことに、心が動くようになりました。

食事をしていて「おいしいなあ」と思う感覚、夜、眠る前に「今日も無事だった」とホッとする感情、窓を開けて深呼吸したときの空気の香り、外を少し歩いたときの風の感触―。

「心地よいもの」が、自分のまわりにたくさん見つかりました。そしてその瞬間、不安はどこかへすっと引いていきました。


さらに不思議なことが起こります。

連休中だったにもかかわらず、仕事の依頼が入り取材の連絡が届き新しい生徒さんの申し込みが来たのです。

何も動いていないように感じていたのに、「ありがたいこと」が次々とやってきました。

大きく体調を崩した私は、いつしか「健康もない」「お金もない」と、また不安に飲み込まれていたのです。でも、周りを見渡すと・・・

・家でちゃんと生活できている
・食べるものもある
・仕事もある

「私、実はそんなに不自由じゃないかも?」

と思えたのです。


あるもの」に気づく。

これは、私が講演でもいつも伝えている大切なメッセージです。けれど、こうして改めて体験してみると、「まだまだできていない自分」にも気づきます。

できているつもりだった。
「あるもの」に、感謝しているつもりだった。
でも、本当の意味で「あるもの」に目を向けるのは、けっこう難しいことなんですね。


「 不安は、なくすものじゃなくて、つきあい方を変えるもの。 」

・深呼吸して、「ああ、生きてるな」と感じる。

・できたことだけを見つけて、「今日はこれができた」と思う。

・外に出て、光と風に包まれてみる。

・目の前の「あるもの」に気づいて、「幸せってここにあったんだ」と思ってみる。

そんな「不安を撃退する小さな習慣」が、私をゆっくりと回復へと導いてくれています。


部屋で、ごろごろしながら見ていたネットニュースに、ふと「これまでの自分を振り返るような」記事が目に飛び込んできました。それは、次回のブログでご紹介しようと思います。

最後まで読んでくださって、ありがとうございました。

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